
Old WATCH
New STYLE
Domestic Fashion and Vintage Watches
スタイルがクールに深まる
逸品時計のストーリー
INTRO
着こなしがカッコ良いかどうかは、
トレンドの有無でもなく金額の多寡とも関係ない。
その人らしく馴染んで見えるかどうかが一番大事。
そういう意味で日本人はドメスティックな
ウエアを軸にコーディネイトを
組むのが理想かもしれない。
多様な物事を積極的に取り入れ
馴染ませるという和の感性。
そのセンスをもって洋装との
付き合いを模索し続けたドメスティックブランドは、
自由に着こなしを楽しむ日本人に
ナチュラルにフィットする服作りを心得ている。
昨今は、そういった“ドメブラ”が
有するハイブリッドかつ繊細なセンスに
注目が集まり、世界的にも評価を高めている。
また“馴染み”という観点から、
ヴィンテージアイテムも見過ごせない要素を持つ。
長い歴史のなかで完成したデザインに加え、
年月を経ることで重厚さを獲得したヴィンテージアイテムは、
新品とは異なるこなれ感がポイントだ。
特に著名ブランドのヴィンテージウォッチは、
内部のメカに関しても外観の洗練性においても
工芸品的なクオリティを併せ持つ。
スタイルに自然に馴染みながら、
着こなしに対し圧倒的な存在感を添えてくれるのだ。
センス良く自然体を貫くお洒落に、
華やかすぎるアクセサリーは逆に野暮。
着る人に寄り添いつつ個性やストーリーを
感じさせる逸品時計を大切にしたい。
そこで、お手本となるドメスティックな
ヴィンテージウォッチスタイルを、
3つのコーデにてお届けする。



テーラードを品良く崩すドライバーズウォッチの妙
メンズの一張羅といえばテーラードのジャケットだ。
とはいえビジネススーツ的なかしこまったものは、カジュアルシーンではトゥーマッチ。一定の格式を備えつつ、力の抜けた一着をぜひ用意しておきたい。ポイントは肩パッドや芯地を極力抑えたフリーなコンストラクション。
またポケットは縫い付け式のパッチポケットであれば、一層気軽な雰囲気となる。この一着は、その名も「ジャケット」というドメスティックブランドの定番品。
1920年代のスモーキングジャケットをベースにフレンチのVゾーンを取り入れた仕立てであり、ドレスシャツはもちろん、ポロシャツやTシャツでも洒脱にキマる深い懐を持つ。
そのファーストモデルではコットンカルゼなる織り筋が特徴の生地を採用。素材感が豊かなためシンプルな装いでも味わいあるルックスが完成する。
余力があればちょっと首元に色柄スカーフを巻いてみたり。ウエア類を無地にすることで、バランス良いメリハリ感が楽しめる。


そんな装いに似合うのがジャガー・ルクルトの1960年代製ドライバーズウォッチだ。ご存知のとおり同社はスイスきってのマニュファクチュールとして、パテック フィリップやオーデマ ピゲ等のメゾンにもムーブメントを供給してきた名門。
本作はなかでも時計好きから支持を得るドライバーズ型。
ハンドルを握る手首の側方に装着することで、運転中にも時刻確認しやすい形状が特徴。
四角型のケースには18Kゴールドを使用しておりリッチな輝きを放つところも大いに魅力。眼鏡やシューズの金具などとトーンを合わせて着こなせば、シンプルなジャケットスタイルも一気にクラス感あるものへとランクアップ。ギラギラさせない渋味あるゴールド使い。
それこそが大人のセンスの見せ所。
WATCH:JAEGER LE COULTRE Driver's Watch
BLAZER:JACKET COTTON KERSEY JACKET
INNER:UNFILO
PANTS:saby
EYEWEAR:YUICHI TOYAMA.
厳選の時計と小物でオンスタイルを一新
オンタイムの装いは、ここ数年でかなりカジュアルに自由な方向へとシフトした。とはいえビジネス自体への敬意はマストであり、落ち着いた色使いや襟付きシャツの着用等で、大人の品位をアピールする姿勢は忘れたくない。
カジュアルなスニーカーを軸とするオンスタイルでも、スポーティ過ぎずモノトーンカラーやドレスシャツなどを取り込めば、グッとシックな印象となる。しかしスニーカースタイルはどうしても“軽見え”しがち。そこで取り入れたいのが革製バッグだ。ただし従来のビジネス鞄では収まりがイマイチ。
感度の高いレザーバッグをぜひ用意したいところ。
テクネはあの吉田カバンにてキャリアを積んだ、日本人デザイナーが手掛ける注目のブランド。このレザートートも随所にこだわりが込められている。ポイントは気分によって持ち替えられるダブルハンドルにあり。ブラス製ハンドルは洒落たアクセントになると同時に、テキスタイルハンドルで肩掛けにて持つ場合、開口部が開きやすくなるという。
何よりタッチの良いイタリア製キップレザーのバッグは、カジュアルスタイルに重厚感を添えるジャストな存在だ。


軽快なカジュアルスタイルに大人の存在感を添えるものとして、ヴィテージウォッチは特に有効だ。
この1960年代製ユニバーサルジュネーブのポールルーターは、隠れた歴史的名品として非常にアイコニック。現在ではパテック フィリップやピアジェなどの高級ブランドが採用するマイクロローター式自動巻き上げを、世界に先駆け導入したモデルである。
また本作は鬼才、ジェラルド・ジェンタが20代のおりにデザインした時計としても有名。数字を配さないシックな3針型は時代を超えるミニマル美を放つもの。
ただしエンジンターンド風の刻み入りインデックスにより、表情は適度に豊かである。また飽くまでドレッシーなポールルーターは、臆せずビジネススタイルに着けられる一本だ。
かつてマイクロローターが示した進取のマインドを腕元に宿しつつ、仕事に臨むことができる。
WATCH:UNIVERSAL GENEVE POLEROUTER
SHIRT:texnh
INNER:HEUGN
PANTS:texnh
EYEWEAR:SAUVAGE
BAG:texnh BRASS HANDLE TOTE/LEATHER
モダン・プレッピーは知的かつアクティブに
プレッピーな装いは日本人とも相性良く、着る人の体型やキャラクターに関係なく着こなしやすいスタイルだ。
しかし着用アイテムをアップデートさせないと、単に懐古的なルックスとなってしまう。このバルカラーの薄手コートは一見化繊風にして、シルク混紡により上品な艶感を放つもの。
トラッドながらメタルのスナップボタンゆえ、スポーティな軽快感も兼備する。また、こういったプレッピースタイルは革靴でシメるのが大人の流儀。とはいえ欧米のドレスシューズは日本人にマッチしない場合が多い。
散歩など長時間の歩行を前提とする場合、フィットの悪い革靴では苦痛を伴いがちだ。
150年という歴史を誇る本邦靴匠の大塚製靴は、日本人足型を長年研究してきた老舗。この英国風チャッカも重厚なルックスでありつつ日本人足型の要所をしっかりホールドし、確実・快適な歩行をもたらすグッドイヤー仕立て。
また、アッパーには上質な国産キップレザーを使用し、デイリーなジーンズスタイルでもワンランク上の装いに見せてくれる仕上がりだ。


そんなドメス・プレッピーな装いをさらにランクアップさせる名脇役がドクサのクロノグラフ。ドクサは、かつてドイツ軍用のミリタリーウォッチや、ブガッティのダッシュボードクロックを手掛けた実力派。
このクロノグラフは1950年代製であり、現代の感覚ではやや小さめと言える35oケースが逆にフレッシュだ。プレッピースタイルとは、言わば富裕の学生スタイルだが、あえてクロノグラフを添えることでアクティブな雰囲気も感じさせる。
しかも内蔵するムーブメントは、ロレックスがかつてデイトナにも搭載した名機バルジューcal.72の派生機。72の後ろに「C」が付くカレンダー機能搭載型であり、月・曜日・日の表示を備えたトリプルカレンダーは知的な印象も併せ持つ。
いま実践するなら教科書的なプレッピースタイルにあらず。複雑な味わいを放つ無二のプレッピーを目指したい。
WATCH:DOXA Triple Calendar Chronograph Valjoux 72c
COAT:HEUGN
SHIRT:Maker's Shirt 鎌倉
TIE:Maker's Shirt 鎌倉
PANTS:Kiivu
BELT:HEUGN
EYEWEAR:YELLOWS PLUS
BAG:texnh
CAP:texnh
SHOES:Otsuka チャッカブーツ

パッと見の派手さで魅せるのではなく、
じっくり付き合うなかでその良さが
じんわり伝わるドメスティックブランドのアイテムたち。
それは真に日本人のボディにフィットするだけでなく、
ライフスタイルや感性にもマッチするからに他ならない。
また、長く付き合うことで味わいが出るのも
優良なドメスティック・アイテムの見逃せないところ。
他方、ヴィンテージウォッチも
そんなドメスティック・アイテムに通じるエッセンスを持っている。
派手さというよりも、長い時間を掛けて獲得したこなれたオーラ、
それに適切なメンテにより愛用し続けられる確かな機能は、
永続的なスタイルと同義である。
ひと通りのファッションを経験したその先にあるのは、
こんなヴィンテージウォッチ×ドメスティックブランドで作る、
味わい深く持続的なスタイルに違いない。
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Creators By
文・長谷川 剛
写真・中村 彰男
スタイリング・篁 大輔
ヘア&メイク・勝間 亮平